東京高等裁判所 昭和31年(て)9号 決定
本件申立理由の要旨は、「右申立人増田義一は、前記被告事件について、昭和三一年三月二四日東京高等裁判所で控訴棄却の決定を受け、同月二七日その送達を受けたが、同人は当時病臥中であり、また同裁判に対する不服申立の期間は十四日間であると誤信していたため、全快のうえ信頼すべき弁護士に上訴手続を依頼しようと考えていたが、同年四月二日前記弁護人細田綱吉に相談したところ、はじめて右決定に対する不服申立の期間は三日であり、既に徒過していることを知り驚いた次第であるから、上訴権の回復を求めるため本件申立に及んだものである。」というにある。
そこで、本件申立事件記録ならびにその本案事件である当庁昭和三一年(う)第四三八号事件記録を調査すると、申立人増田義一は昭和三一年一月九日、水戸地方裁判所土浦支部において公務執行妨害、暴行被告事件につき、罰金二千円と懲役六月の判決を受けたが同月二〇日控訴の申立をしたので当庁昭和三一年(う)第四三八号事件として係属したこと、当裁判所から発した「弁護人選任に関する通知」と「控訴趣意書差出期間を同年三月一三日と定める旨の通知」は同年二月一一日、同人に送達され、これに対し申立人(被告人)は同月二〇日弁護士山本粂吉と連署して同人を弁護人に選任する旨の届書を当裁判所に提出したが、前記控訴趣意書差出最終日である三月一三日までに、被告人は勿論、弁護人からも控訴趣意書が提出されなかつたので、当裁判所は同月二四日控訴棄却の決定をなし、右決定は同月二七日に被告人ならびに右弁護人に送達されたことが認められる。而して控訴裁判所のなした控訴棄却の決定に対する不服申立の方法は異議の申立であり、その申立期間は三日であることは刑事訴訟法第三八六条、第三八五条第二項、第四二二条の諸規定に照らして明らかなところである。申立人等は同期間内に異議の申立をすることができなかつた事由として、申立人(被告人)が前記控訴棄却の決定の送達を受けた当時病気であつたこと、右裁判に対する不服申立期間は十四日であると誤信していたことという二点を挙げているが、叙上のような経過の下においては右主張にかかる事由の如きは刑事訴訟法第三六二条所定の、「自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴ができなかつた」という場合に該当しないから、遺憾ながら本件上訴権回復の請求はこれを採用することができない。
(花輪 山本 下関)